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2017年07月29日(土) | ♯439 ドキュメント・酪農王国を陰で支える獣医師に密着
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2017年07月29日(土) |  ♯439 ドキュメント・酪農王国を陰で支える獣医師に密着

NA森結有花アナウンサー

日本一の乳牛飼育頭数を誇る
酪農王国北海道。
広大な大地とおいしいエサに恵まれた
乳牛から生乳は生産され、
私たちの食卓に届けられています。

そして、安全安心な生乳を生み出すため、
酪農家は牛と向き合い、
牛の健康を守っています。
しかし乳牛のエキスパートである酪農家でも
手におえない事態が起こってしまったら…。

彼らは乳牛の獣医師。
酪農家とタッグを組み、
生乳生産を影で支えています。

酪農家 水間友幸さん
「自分たちが診れない所を診てくれる存在でし
 乳量も変ってくると思うので大切ですね」

酪農家からの熱い信頼
重要な役割を担う獣医師。

その世界に飛び込んだ一人の女性がいます。

「終わったらお腹スッキリだよ…」
「ごめんね何回も…」

彼女はいつも牛に話しかけ
気持ちのいい返事をします。

その人は森田優佳(もりたゆか)さん。
今年4月から乳牛の健康を守る獣医師として
日々、奮闘してます。

出来ること、まだ出来ないこと、
そのはざまで彼女が今思うこととは…

森崎リーダー
今回のあぐり王国ネクストはいつもと違い、
ドキュメンタリー企画をお送りします。
専門知識と技術を武器に北海道の酪農を
影から支える獣医師。
その世界に飛び込んだ一人の女性に
密着しました。

AM7:30 出勤

密着初日の朝、
優佳先生が出勤してきました。 

彼女が働いているのは
NOSAI(のうさい)道央 名寄家畜診療所。
主に乳牛の診察や治療を行っています。
北海道には5つの農済組合があり、
それぞれの地域で乳牛や馬など
大型家畜の治療活動を行っています。

2017年07月29日(土) |  電話が一斉に鳴りだし仕事スタート!

Q「朝の検査は森田さんのお仕事?」

優佳先生
「そうですね。
 まず菌をしっかり見られるように…と。
 菌が見られないと薬も何も考えられないので」

優佳先生のこの日のスケジュールは
ご覧のとおり。
新人獣医師 優佳先生は誰よりも早く出勤。

そして、乳牛からサンプリングした
生乳の細菌検査をします。

森崎リーダー
乳牛にとって身近で気を付けなければ
いけない病気の一つに‘乳房炎’があります。
この病気は乳房に菌が入り、
炎症を起こしてしまいます。
その菌にもいろいろな種類があるので 
有効な薬を判断するため
このような検査をしているんですって!

優佳先生「おはようございます」

先生
「優佳ちゃん、農場のあの牛どうなった?」

優佳先生
「全然力入ってなくて…
 ただ血液検査の結果は来てたんですけど…」

優佳先生はまだ新人なので
先輩について行動しています。
こちらの森田稔(もりた・みのる)先生は
獣医師歴20年。
特に外科手術の腕に定評がある先生です。

優佳先生
「なんか見た感じはかなり弱っている…」

森田先生「なんだろう」

優佳先生
「昨日農場の方いらっしゃらないくて…」

AM8:30 始業

ルルル ルルル
「はい共済組合・森田優佳です」

8時半の受付が始まると
あわただしくなる事務所。
酪農家からの診察依頼の電話が鳴り始めます。

森崎リーダー
それにしてもひっきりなしに
電話が鳴りますね~

森アナウンサー
名寄診療所では名寄市と下川町の
およそ7000頭の牛を
8人の獣医師で診療しています。
1日で平均7件程度の酪農家を
担当しているんだそうです。

Q「そろそろ診療ですか?」

優佳先生「はい。準備します」

安全安心な牛乳は健康的な牛から。
その牛の健康を守る獣医師は
酪農家からの様々なSOSに応えていきます。
新人獣医師・優佳先生の腕が試される診療が 
いよいよ始まります。

2017年07月29日(土) |  往診スタート!
午前9時。今日診療する牛へ向かいます。
この日は3軒回るそうです。

優佳先生
「森田先生。今日はエコーとかいります」

森田先生「積んだ!」

優佳先生「ありがとうございます」

乳牛の獣医師が往診で行うことは主に3つ。
一つはケガの治療。もうひとつは病気の治療
そして妊娠する準備ができているかなどを見る
繁殖健診です。

水間牧場にやってきました。

優佳先生「おはようございます」

水間友幸さん
「昨日、一昨日かな?すれちゃって血が出た」

森田先生「特に問題はなかった?」

水間さん「まあ牛は元気」

優佳先生「本当に腫れ引きましたね」

この牛は2カ月ほど前、ひづめに細菌が入り、
その一部を切り落とす手術をしました。
まずは患部を見るために洗います。

ンモオーンモオオオー

優佳先生
「ごめんごめん…だいぶいいかんじ」

森田先生「もうひといきだ!」

森崎リーダー
乳牛の体重はおよそ700キロ。
大きな体を支える足の不調は
命取りになりかねません。
しっかり歩けるかな?

森田先生
「よしっ!ちょっと歩いてもらおうか」

森崎リーダー
あ~良かった。大丈夫。
牛の歩きをチェックして
この牛への今日の治療は終了です。

チラッ 振り返る牛。

二人とも「ふふふ」と笑う。

優佳先生「どよっ!(どうよって)」

森田先生「問題ないね!」

優佳先生「はい!」

さあ、次の農場へと移動します。

2017年07月29日(土) |  担当の牛がいる牛舎へ…気持ちが焦る!!
続いて向かった牛舎には、
優佳先生が担当している牛がいます。
この日は、数日前から体調が悪く、
熱が続いている牛の様子を見に来ました。
優佳先生
「熱は39.5℃に下がったんですけど
 ルーメン(第1胃)はまだ動き悪いです」

この牛は前日に解熱剤のおかげで
今日は熱が下がっていますが
ただ熱が出る原因が分かりません。
どこに問題があるのか森田先生と探ります。

優佳先生「血液検査もさせてもらいます」

より詳しく診断するため、
血を採り検査をすることにしましたが…

優佳先生
「ズレたかな…キツイかなあ」

生産者さん「ゆっくりでいいよ」

優佳先生「すみません」

採決しましたが…
優佳先生
「ちょっと(血が)固まって…ますね。
 だめだな。
 すみません。もう一回採り直します」

森田先生
「まっすぐ刺したら、まっすぐ上にあげて」

優佳「はい。ありがとうございます」

森崎リーダー
森田先生から適格なアドバイスが行きました。
酪農家さんも見守っていますよ!
優佳先生!がんばって!

優佳先生「ありがとうございます!」

森崎リーダー
おおおっ!今度はしっかり、成功しました。

優佳先生「よしっ!」

午前中のうちに診なければいけない牛は
まだまだいます。
続いては、1軒目の水間牧場に戻り、
また違った診療を行うということですが…

2017年07月29日(土) |  苦手な人工授精はどうなる?

優佳先生
「よしよしごめんごめん。
 よーいしょ。ごめんね」

森崎リーダー
これは繁殖検診です。
牛から生乳を搾るためには
妊娠して出産しなければいけません。

そこで卵巣や子宮を手で触り
妊娠する準備ができているかなどを
判断するんです。
微妙な違いに気がつかなければいけないので
全神経を手に集中させて行うんです。
優佳先生
「結構いい発情かなと思います。
 あとで確認お願いします…」
健診中、人工授精が可能と判断できる
発情状態の牛を見つけました。
その判断を森田先生に確認してもらいます。

森田先生
「ちょっとねえ…
 むしろ終わり加減でない?」

森崎リーダー
あ~残念!優佳先生、
発情真っ最中ではないということでした。

しかし、受精可能なタイミングではあるので、
人工授精を行うことに…。
優佳先生、大役を任されました。

優佳先生
「ごめんよ~。よいしょっ。よいしょ」

実は優佳先生、人工授精が苦手で
これまで数回しか成功していません。

森崎リーダー
うーんこれはコツをつかむまで
難しいって聞いたことあるなあ。

森田先生「どうだい?」

優佳先生
「いま頸管の…中…はい」

※頸管-子宮の入り口

優佳先生
よし!オッケー。終わりました」

優佳先生「できました!」

森田先生「うへへ~良かったね

優佳先生
「よかったああああ」

森崎リーダー
優佳先生お疲れ様でした。

この日は 2人で15頭の牛の繁殖健診を行い、
午前中の牛の健診は終了です。

2017年07月29日(土) |  ちょっと一息ついて…午後のお仕事スタート!

13:40 昼食

森崎リーダー
やっとお昼ご飯!
優佳先生、手作り弁当ですか?

森田先生
「いつもより随分頑張ったねえ~」

優佳先生
「ミニトマトを買おうとして忘れました。
 ミニトマトの赤を入れようとしたら…」

森崎リーダー
森田先生は日ごろの優佳先生の頑張りを
どのように見ているんでしょうか?

森田先生
「直腸検査などはあまり得意じゃない…
 人工授精も…ただ会得するには
 ある程度の時間をかけて
 手を突っ込んでいないといけない。
 その牛を押さえているのは農家さんなので
 農家さんにも感謝しているし
 それを引き出す彼女の一生懸命さも
 農家さんに伝わっているのかなあ。
 育ててもらっている状況だと思いますが
 すぐ恩返しすると思います!」

優佳先生(小声で)「頑張ります…」

「紅一点ですよね」

森田先生
「診療所がパッと明るくなる!」

優佳先生
「もうちょっと女子力あったら良かった…
 お弁当にミニトマト入れるくらいの
 女子力は次つけてきます」

森田先生「そうだねえ。欲しかったね」

優佳先生
「茶色すぎた。緑入れたんですけど!!」

PM14:00 カルテの整理
午後は午前中に見た牛のカルテづくり。
どの牛にどのような薬を使ったかなど
細かく書き残していきます。

カルテづくりがひと段落した午後4時。
優佳先生が真剣に見ていたものがありました。
それが…

優佳先生
「明日ヘルニアのオペが予定されていて
 先生に資料をいただいていて
 今のうちに予習をしておこうかと…」

森崎リーダー
入念に予習を行う優佳先生。
次々と疑問が湧いてきたところに…

森田先生
「講義してやろうか?腹腔内から…」

優佳先生「はああ。なるほど」

森崎リーダー
森田先生のわかりやすい解説で
疑問が解消されました。これで一安心!

優佳先生「分かりました!」


2017年07月29日(土) |  獣医師を目指したきっかけ

19:30 帰宅

その日の夜、一人暮らしの優佳先生の
ご自宅にお邪魔しました。

森崎リーダー
おっ一人暮らし!お邪魔致します。

優佳先生
大福さん、お客さんやで!
 あっもう細くなって…
 あの人見知りなんですよ」

優佳先生
「大福さん、お客さん来るゆうたやろ」

チュン♪

森崎リーダー
あっ良かった。男性がいるのかと思いました。
小鳥なんですね。
あれ?ちょっと気になる事が…

関西弁になるんですね!

優佳先生
「あはは。そうですね!
 文鳥相手には地元の言葉で話します」

森田優佳(もりたゆか)さん
1990年、6月21日大阪府東大阪市生まれ。
獣医師 優佳先生のルーツは幼少のころに
ありました。

優佳先生
「卒園の頃なんで5歳くらい?
 動物病院の看護婦さんって書いてる。
 多分動物に触れたきっかけが
 保育園のうさぎやアヒルだったと思うんで」

これはそのころの写真です。 

森崎リーダー
動物といるのがよっぽど好きだったんですね。
い~えがお!!

獣医師への憧れと共に成長した優佳先生。
その夢を実現するため、
江別市の酪農学園大学に入学します。
そしてここで運命の出会いがありました。
優佳先生
「学校の近くに牛舎があって
 牛が顔を出しているんですよね。
 牛が珍しくて…見たいっ!て…」

人生を変えた牛との出会い…
乳牛研究会に入部した優佳先生は、
乳牛にどんどんのめりこんでいきます。

優佳先生
「牛に興味を持ちだすと牛の授業の内容も
 頭に入るようになって、
 もうずっと牛舎に入り浸ってました。
 当番でもないのに牛舎に来て遊んでました」

幼いころの夢を叶え、
志した道を歩んでいる優佳先生。
先輩や酪農家の方々の支えも
大きなモチベーションになっているようです。

優佳先生
「経験を積まないと出来ない事も多くて
 そういう経験を積むのに協力して下さっている…

先生も農家の方にも
すごい育ててもらっています!

2017年07月29日(土) |  いよいよ手術開始…

翌日 13:20

翌日、優佳先生の姿はエスツーファームの
牛舎にありました。
この後、昨日予習していた子牛の手術が
予定されています。

優佳先生
「ちょっと触れても大丈夫ですか?
 うわあ…うわあ…
 これくらい開いてますね」

森田先生「ねっ」

この子牛は内臓を守るお腹の壁に
穴が開いていて、内臓が飛び出ている状態。
その穴をふさぐのですが、
ここまで大きいのは珍しく
少し難しい手術になるということ…。

優佳先生
「終わったらお腹スッキリだよ」

森崎リーダー
優佳先生はどんな時でも
牛に優しく声をかけるんですね

酪農家さんもやってきました。

名寄診療所では手術は牛舎で行います。
手術がしやすいようにと
酪農家の方が重機を用意してくれました。
牛舎が手術室に変わっていきます。

森田先生「優佳ちゃん。もう刈り出して」

優佳先生「分かりました。はい」

バリカンで毛を刈ります。
準備が整いました。
いよいよ手術が始まります。
森田先生
「なるべくテンションかけて…
 最初痛がって動く時あるから…
 これ外して」

優佳先生「はい…はい…」

森崎リーダー
緊張感が伝わってきます


2017年07月29日(土) |  歩み出した女性獣医師!
今回、優佳先生は助手を任されています。
執刀医がスムーズに手術ができるように
道具を準備する役割。

手術の流れはもちろん、
執刀医のクセなどを把握しておくことが
大切なのです。

森崎リーダー
そうですねえ~結構重要なポディションです。

優佳先生「はい」と手渡す

森田先生「残念だなあ~」

優佳先生「はい?」

森田先生「左利き仕様ですから!」

優佳先生「あっそうだ!」

森崎リーダー
優佳先生 苦笑い。
森田先生は左利き。針の向きが逆でした。

優佳先生
「よーしよし。動かないでええ
 針外れるからあああ」

森田先生
「一回ぐーって引っ張って
 そのまま把持していて」

※把持(はじ)…押さえ続ける事

2人の先生の適切な処置のおかげで
手術は無事成功。

優佳先生、手ごたえは?

森田先生「訳わからんかった?」

優佳先生
「いやああ~そうですね
 ついていけなかったです」

森田先生
「なかなかのものだ。
 まあ俺の利き手を今後覚えてほしいけどね」

包帯もしっかり巻いて終了です。

鷲見 敏明さん
「今日は帰ったらグダ~っとね
 寝たらいい!!」

優佳先生「夜間に何もなければ!」

毎日の経験を糧に
一人前の獣医師を目指す優佳先生。
酪農家の方々にはどのように
映っているのでしょうか?

鷲見さん
「最初はねカワイイって感じだったですけど
 芯が強いっていうか目の輝きっていうか
 パワーっていうか見た感じですぐわかる。
 仕事そのものは徐々に出来る感じに
 なってきたなあと思います」

水間友幸さん
「誰でも初めての仕事は経験させないと伸びないし
 一生懸命学ぼうとする姿は見えるので
 多分いい獣医師になってくれると思います」

最後に優佳先生の目指す獣医師とは?

優佳先生
「やっぱり今日のオペでも
 農家の方がすごく協力してくれてたんで
 それには応えたいという思いはありますし
 森田先生のオペを見ていて
 的確な獣医師の先生になりたいと
 思いました」

基本的な健康管理は
酪農家がしっかり行っています。
しかし、それでは立ち行かなくなった時に
頼りになるのが獣医師です。

そんなかけがえのない存在だからこそ
酪農家の方々は優佳先生を見守って
育てようとしてくれているんです。
きっと優佳先生も頼り甲斐のある
立派な獣医師さんになってくれるはずです。
酪農王国北海道 万歳!

お・ま・け

森田先生
「お弁当は撮ってもらえなくて残念だったね」

優佳先生
「今日は昨日より品数増やしたんですよ」

優佳先生
「品数を増やしてピンクを入れようと
 ベーコンを入れました…」

森田先生「おーそうかあ(笑)」

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7月22日のクイズ
「生徒の目標や夢をカタチにする、
 士幌高校の取り組みは何だったかな?」

正解は「志プロジェクト」でした。




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