児童「うーん!楽しみ~♪」
森崎博之 「んー、おいしそう! 給食の王様! みんなが大好きなカレーですね」
献立はカレーライスと果物のヨーグルト和え。 子ども達も楽しみにしていたメニューのようですが、 その様子を見つめる、一人の女性がいます。
「頑張って食べられる?ご飯足りるかな~」
今回のお話の主人公、足寄町の給食調理員、 廣田裕美(ひろた ひろみ)さん です。
廣田さん 「大誉地の子はいっぱい食べてくれるので 私たちも作り甲斐があります。 改めてまた頑張ろうと思いましたね」
VTR音声 「第11回全国学校給食甲子園、 優勝!北海道足寄町学校給食センター おめでとうございます」 地元の食材を使い、献立のプレゼン、 調理方法・美味しさなど、 様々な審査を行って競い合う 「全国学校給食甲子園」。
北海道代表として出場した足寄町は、 名産のラワンブキを使った料理で挑み、 素材の味を最大限に引き出した工夫と、 その美味しさが評価され、 見事、日本一に選ばれました。
廣田さん 「私たちが自信を持って出したものって 子ども達もしっかり食べてくれるんですよね」
産地を訪れ、食材を学び、その魅力を知る。
学校給食日本一に輝いた調理人の、 新たな挑戦に密着しました。
朝7時45分。 給食調理人、廣田さんの1日が始まります。 「おっ出勤早々、 足早にどこへ向かうんでしょうね…」
廣田さん 「おはようございます! 更衣室です!ここ!」 「おっと、これは失礼致しました。 調理人の皆さんの更衣室だったんですね… 失敬!」
カシャカシャカシャカシャ…
トントントントン…
ジャバジャバジャバジャバ…
ゴロンゴロンゴロンゴロン
決められたレシピをもとに、限られた時間で、 手際よく調理を進める調理人の皆さん。 下ごしらえを終え、味付けまでした料理は、 すべて、廣田さんがチェックをします。
廣田さん 「苦味が…川上さん飲んでみた? 何か苦味出てない?」
川上さん 「こっちの釜の方が、 煮干しの味が強いかなと私も思いました」
「ふむふむ…レシピ通りに調理しても、 食材の状態によって味が変わったりしちゃうから、 必ずチェックすることが重要なんですね!」
廣田さん 「もっと“練り”欲しいよね!」
鶏肉を調理しながら… 廣田さん 「やわらかくていいね~喜ぶわ!子ども達ね!」
美味しい給食を作るため、 一切妥協しないのが廣田さんの信念。 その給食を待ち望んでいる子ども達を 待たせることも、絶対に許されません。
手際よくふたをしていく。
「いいよ~」
「いきますっ!!」
どんどん運ばれていく給食。
午前11時45分 昼食
「今日は小豆が美味しいよ」 「生産者さんに感謝だね」
昼食は、自分たちが調理した その日の給食を食べます。 料理の出来具合など、 調理人同士が共有できる時間を 設けているのです。
廣田さん 「子供の口に入るものなので 自分の家庭と同じものを同じように 給食でも作ってもらいたいたんです」
調理人 「美味しくないものはプライドが許さない。 そこは絶対なんですよ」
廣田さん 「自分たちが納得していないものは 出したくない!!」
調理人 「(廣田さんの思いに) こちらも返していかなきゃと思う」
廣田さん 「本当に仲間に恵まれているなって 思います。 みんなにちょっとゴマすっておいて…」
調理人「(献立に)ゴマ入ってるからね!」
「午後、廣田さん何やらパソコンに向かって 作業をしていますね。 おっ、これは給食の献立ですね~ 調理人のリーダーは、 色んな仕事があるんですね」
廣田さん 「まだこれだけ仕事あるんですよ。 食器回収の仕事もあるので たくさんやらなきゃいけないことがある! 何とかしてやんなかったらと思って…」
「あれあれ? やることがいっぱいと言ってた廣田さん。 事務所を出てっちゃうようですけどね~ どちらへ向かうんですか?」
廣田さん 「今は白菜をとりに行きます!」
到着したのは、白菜を提供してくれている 生産者の畑です。
廣田さん「こんにちは~」
「畑一面に広がる白菜! 鮮度抜群の食材が使えるのは贅沢ですよね」
廣田さん 「バリバリ!すごいですよ~ ダンディな生産者さんです!」
生産者 簑島親彦さん 「50玉?とっていくから車に積んでいって」
バリバリッ
「いやー、新鮮さがわかるイイ音です。 しかも、鮮度抜群の白菜。 50玉も収穫できるなんて、 地域の繋がりがあるからこそですね」
「廣田さんの食材調達は、まだ続きます。 こちらの生産者は、どんな食材でしょうか? おっ、ジャガイモですね。 俵形が特徴の品種、メークインですね」
廣田さん 「スープカレーに使用しようかと… ゴロゴロ大きくして! 子供たちの食べっぷりが違うんですよ」
生産者 上妻 ハツエさん 「給食でも食べてくれたらいいなと思ってます」
廣田さん 「愛情込めて作ってくれる人がいるから おいしく食べられるので、 本当にありがたいです」
生産者との連携の輪は少しずつ広がり、現在、 11軒が給食用に食材を提供してくれています。
そんな中、 これまで使ったことのない羊肉で、 廣田さんが新たなカレー作りに 挑戦するというのです。
廣田さん 「次はね…羊の徐骨(解体)作業が行われるので 金曜日のカレーに使う羊の解体作業を 勉強のために見に行きます」
リーダー 「地元にあるめん羊牧場へと向かう廣田さん。 これから羊の解体作業を見学するそう…」
廣田さん 「命をいただくって感じじゃないですか。 羊を丸々一頭、 子供たちのために提供して下さるので… その一部始終というか… と殺は見られないけど どうやって給食センターに運ばれるかという 道のりを知りたい。やっぱり作る側もきちんと (子ども達に)伝えないといけないと思ってます」
廣田さん 「宜しくお願いします!」
石田さん「これ…半身」
廣田さん 「あそこの牧場にいたんですよね?」
石田さん「いましたよ。21キロ」
手際よく解体していく石田さん。
廣田さん「うわ~すごい!すごい!」
石田さん 「脂をどこまで使うか? 羊肉の脂は融点が低いから…」
廣田さん 「冷めると(脂っぽさが)出てくる?」
石田さん 「熱々で食べるんだったら たっぷり入れた方が味は濃厚になる!」
廣田さん 「アキレス腱と胃袋は一緒に煮ても大丈夫ですか?」
石田さん「脛とかと同じような扱いで大丈夫!」 「羊を知り尽くした生産者の言葉を、 一つ一つメモに書き留めていくんです。 今回のカレーは、肉だけではなく、 骨から内臓に至るまで、 すべてを使って作るようです」
廣田さん 「三歳の羊は人間の年齢でいうと…?」
石田さん 「20歳かな…だから本当はカレーにするなら もっと年をとってる方が逆に美味しいんですよ」
廣田さん「うーん。旨みがあるんだ。そうなんだ」
「命をいただく。 その意味をしっかり受け止めている様子の 廣田さん。 その思い、子ども達にも伝わるといいですね」
廣田さん 「もうちょっと子供たちに ありがたさを受け止めてもらいたいです。 まだ伝わってない部分もあるので 地域みんなで子どもを育てられていることを もう少し伝えたいですよね」 「足寄町で育った羊を丸ごと使ったカレー。 どんな味わいになるのか、楽しみです!」
調理人という枠を超え、 食に関わるすべてに全力で向き合う。 そんな廣田さんの原点とも言える場所に、 案内していただきました。
ピースする女性。 「いきなりのピースサイン…この方は?」
廣田さんの母、星川礼子さんです。 町内で小さな民宿を営んでいます。
「宿泊客への料理を提供したり、 家族で食に関わる仕事をしているんですね」
町内で飲食店を営んでいた 廣田さんのご両親。幼い頃から、 食に携わる環境で育った廣田さんは、 家業を継ぐため、 札幌にある調理専門学校へ進学。
卒業したあと、実家へ戻り、4年間、 家業を手伝いながら調理の技術を磨きました。
その後、病院の配食センターで調理人として働き 2003年、足寄町学校給食センターの 調理員になりました。
廣田さん 「ただ作るだけでしたね。入った当初は。 ただ作ればいい…それだけでしたね」
給食の調理を始めた頃は、 ただ作ることだけに専念していた廣田さん。 しかし、あることがきっかけで、 その思いに大きな変化が起こります。
廣田さん 「子どもを産んでからですかね。 自分で親になって 子供の口に入れるものは 安全性に優れたものを選ぶ! 自分の子供も給食を食べるようになった時に 変えなきゃダメかなと思って。 切り方ひとつにしても 味付けにしてもベストな状態で出す!」
廣田さん 「小中高の12年間、給食を食べるとなったら 家庭の次に 給食が食べる回数が多いんですよ。 なので自分の子供みたいなんですよね」
安全安心で美味しい給食を… そんな思いが、廣田さんの原動力となり、 地域食材への思いを深めたのです。
廣田さん 「子どもたちの2番目の母になりたいと 思っているので、 子供たちが舌に記憶をする順番として 給食が2番目にくるように 足寄の給食を根付かせたいんですよね」
カレー作り当日の朝。 めん羊牧場の石田さんが、 食材を届けてくれました。
石田さん「頑張ってください!」
廣田さん「ありがとうございます」
「食材も揃いました。カレー作りスタートです!」
廣田さん 「手始めにネックいきますか!」
調理員「羊肉っぽい、においだね」
「初めての食材ですもんね! やっぱり、羊肉ってほかの肉とは違いますか?」
廣田さん 「いつも豚と鶏がメインなので やっぱりちょっと違いますね。 肉質が締まっている!」
あらゆる部位の肉をカットしたら、 そのほかの具材を大きな鍋で炒めていきます。 「おっ、これは下茹でした羊の肉ですね。 気にしていたニオイはどうでしょうか?」
廣田さん 「弾力があるし、臭みはないし 子供たちも抵抗なく食べられると思う」 「よかったー! 美味しい羊を育ててくれた 生産者に感謝ですね~」
足寄町立大誉地小学校に、 廣田さんがやって来ました。
「こんにちは~」
「調理室では、自信に満ち溢れていたけど、 いざ子供達を前にするとやっぱり不安そう」
児童 「(羊肉が)やわらかくておいしい」 「廣田さん!“美味しい”いただきましたね!」
児童 「ふわふわしていて美味しい」 「普通のお肉とは食感が違っておいしいです」 「子供たちの素直な反応で、 美味しさが伝わってきます! みんなイイ笑顔だ~」
廣田さん 「おかわり?すご~い!!」 「廣田さん、初めての挑戦でしたけど、 いかがでしたか?」
廣田さん 「次は何をしようかなってまた考えてます!」 「子ども達に愛される、 足寄町ならではの給食を目指し、 廣田さんの挑戦は続きます」 ---------------------------------- 11月25日のクイズ 「旭川の江丹別で作られているチーズの種類は、 何チーズだったかな?」
正解は「ブルーチーズ」でした。